2012年4月20日金曜日

今こそルソーを読み直す×クレヨンしんちゃんブタのヒヅメ




昨年度、倫理学で「正義」についての講義を行ったところ、
複数の大学で複数の学生さんから
「クレヨンしんちゃん」の映画が
正義を考える題材になるのではないか?という
ご提案をいただきました。

中でも、Yさんという女子学生さんが
『クレヨンしんちゃん 電撃ブタのヒヅメ 大作戦』を
強く推してくれたので、春休みに観ましたところ…

「をを、これはルソーを理解するのにちょうどいいな!!」と
ビビビとひらめいたのであります。

この映画『クレヨンしんちゃん 電撃ブタのヒヅメ大作戦』に出てくる
「ぶりぶりざえもんのぼうけん」の逸話を見ると
ルソーの人間観がよくわかります!
 
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まずは、ルソーの人間観をホッブスと比較して考えてみましょう。

そもそも、人間とはもともと善なのでしょうか。悪なのでしょうか。

*ホッブス:善を知らないから、悪に陥りやすい。万人は万人に対してオオカミ。

*ルソー:自然状態では善でも悪でもない。
もともとの人間は自己保存と他者への哀れみのバランスが取れており、苦しんでいるものを自然に助けた。だから「正義」も必要なかった。

↑これらの思想をクレしんブタのヒヅメの「ぶりぶりざえもんのぼうけん」と
照らし合わせてみるとこんな感じ↓
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むかしむかし おじいさんとおばあさんが 
あちこちにいましたが、
ぶりぶりざえもんというブタは1匹しかいませんでした。
ある日 渋谷のセンター街で 女子高生の話を聞いていると…
女子高生:「お宝ちょうだい山に行くと 
宝物がいっぱいもらえるんだって」
(お宝ちょうだい山に行ったぶりぶりざえもん)
ぶりぶりざえもんは山道を登って行きました。
道端でレースクイーンが泣いていました。
急いでいたので無視して行こうとしたら…
レースクイーン:「ハイヒールのカカトがとれちゃったの!」
ぶりぶりざえもんはしぶしぶ直してあげました。
手先が器用だったのでハイヒールはすぐ元通り。
レースクイーン:「どうもありがとう。お礼にF1のチケットあげるわ」
ぶりぶりざえもん:「わーい」
道端でOLが泣いていました。急いでいたので見つからないようにしたら…
OL:「部長に急ぎのコピーを頼まれたのにコピーが壊れちゃったの」
ぶりぶりざえもん:「・・・紙づまりだな」
コピーにくわしかったので、すぐ直りました。
OL:「どうもありがとう お礼に居酒屋ドリンク無料券あげるわ」
ぶりぶりざえもん:「わーい」

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ここで一言・・・私のコメント
ここまでの「ぶりぶりざえもん」は自然状態、野生人としての状態でした。
ぶりぶりざえもんは、
困った人がいたら、哀れみの情で自然に他者を助けることができました。
でもでも、F1チケットと無料ドリンク券をもらったぶりぶりざえもんは
「所有」の概念を持つようになり、自然の哀れみの情を失います。
(注:ルソーの場合は、ドリンク券ではなく「土地の所有」が
社会の起源とし、それゆえに欲望が生じ、
他者を自然に助けることがなくなり、
戦争状態が生じるとしています)
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ぶりぶりざえもんの冒険の続き↓

道端で女の子が泣いていました。
女の子:「お腹痛いの」
ぶりぶりざえもん:「治してあげたら なにくれる?」
女の子:「わたし何も持ってないから…」
ぶりぶりざえもん:「じゃあダメだ!」
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↑私のコメント:ぶりぶりざえもん、ついに自然状態から
 欲望を持つ文明人になってしまうW
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プンプン怒りながらいくと薬屋さんがありました。

(やはり女の子が気になるのか、薬屋さんで
F1のチケット&ドリンク券とお腹の薬を交換するぶりぶりざえもん)
(その後、戻って女の子にお腹の薬を無償であげたぶりぶり
ざえもん…気が付くとぶりぶりざえもんは山のてっぺんにいました)

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↑でもやっぱり、もともとの「他者に哀れみを持つ」人間観
(ぶりぶりざえもんの場合、ブタなんですけどW)
に戻りました。ここらへんは、クレしんの作者の「願い」のような
ものを感じます。「人間は所有の欲望を超えて他者を助ける正義を
根底に持ち続けることができる」という願いのようなものです。
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ぶりぶりざえもんの冒険の続き↓

ぶりぶりざえもん:「あーあ、宝物なんてなかったし
F1のチケットもドリンク券もなくなっちゃった」

(しかし、3人の女性の「ありがとう」の言葉を思い出すぶりぶりざえもん)

ぶりぶりざえもん:「そうかこれが・・・」
(ぶりぶりざえもんの心の中には
たくさんの宝物がたまっていたのです。
こうしてぶりぶりざえもんは救いのヒーローと
なって多くの人のために働きました)

映画『クレヨンしんちゃん電撃ブタのヒヅメ大作戦』より
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ルソーの「自然状態の人間は哀れみの情があり、もともとは
バランスが取れていた」(だからあえて正義は必要なかった)という考え方は
暖かい感じがして好きです。なんだか希望が持てます。

この人間観をドラえもんに喩えると、
自然状態では他者の幸せを願うことのできる
野比のび太君がルソーの人間観に近いです。
(しかし、のび太もラジコンの所有が絡むと
所有欲ゆえにバランスを欠く)

一方のホッブスの人間観は
「これは俺のものだ」「いや、のび太のものも
俺のものだ(byジャイアン)」という感じです。
(万人は万人に対してオオカミ)

さて、それら2つを念頭に置いておくとして、
近代の人間観として提示されるのが
アーレント(ドイツ系ユダヤ人の女性哲学者)の人間観です。

彼女は、なんと、「みせかけ重視」なんですね。
みんなの前で「善い人間」を演じきれたらそれでよい、
という人間観なのです。

人間の善良な本性を認めないアーレントは、
見かけ重視、つまり出木杉くんの味方なのです。
たとえ、出木杉くんが実はスネ夫より腹黒であっても、
優等生を演じ切れたらそれで良いという考え方。
みなさんはどう思いますか?

*ルソーの思想を分かりやすく解説した本はこちら
*アーレントの思想を分かりやすく解説した本はこちら
*映画『クレヨンしんちゃん電撃ブタのヒヅメ大作戦』はこちら

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