2012年5月27日日曜日

佐藤忠男『映画が語る 働くということ』×実際の移住者へのインタビュー

『天然生活』とか読んでいると
都会を捨てて田舎で農耕生活に入っている人がいる。

オシャレな雑誌に
いいカメラマンが入って
その生活を取材していると
なんだか「人生のゴール」や「悟り」を
見せられている気がするけど
ほんとのところはどうなんだろう。

サイトとか見ていると
「将来は田舎で野菜をつくりたい」
というプログラマーさんとかたまにいる。
田舎って天国かなにかと
間違えられているのではないか。
・・・・・と畑の多い中途半端な田舎に住んでいる自分は思うW

ものすごく昔に
「ハワイに移住したけど
ハワイの生活も結局現実で、
辛かった」という小説を読んだことがある。
えーと、タイトルは・・・パイナップルの彼方に・・・だっけ(うろ覚え)

田舎生活も、実際のところはどうなんだろ。

まずは映画で探ってみたい。
その際に参考になる本がこれ



LOFTのジュンク堂で見つけた本です。
(自分の本を平積みにしてくれた本屋さんなので
本屋さんをアピールしておこう、いい本屋さんです)

映画『深呼吸の必要』についての説明は202ページからはじまる。

1)若者たちが沖縄できび刈をするのだが、
その若者は要するに、みな自分探し系である。

2)んで、その経緯を描いている映画というよりは
もくもくと田舎で肉体労働する様子を描いた映画である。

3)この本の解説が鋭いと思うのはここからである。

*社会ではなく個人の立ち直りとしての田舎での肉体労働

*仕事が機械化していって神経ばかり使っている現代社会
その反動として肉体労働をする・・・という一周まわった
肉体労働賛美を描いたものである

この「都会での生活を経験し、
一周まわって田舎で肉体労働」という感覚こそが
雑誌『天然生活』などに見られる「田舎暮らし」なのだ。

と、ここでハタと考える。

映画よりも、現実を知りたい。
そこで、私は、ツイッターのフォロワーさんに
移住農業をしていらっしゃる方がいるのを思い出し
経験談を書いていただきました!!
(ありがとうございます!!!)

以下、
30代・男性・匿名希望の男性よりいただいた文章です。
農業をするために移住した方の
リアルな声を聞き、みんなで考えてみたいと思います。
(学生さんの感想はまたのちほどまとめます)


1.就農2年前
 今の高知県香美市香北町に移住したのは2005年の正月。その2年前頃、自分は仕事においても遊びにおいても完全に自分を持て余していた。具体的にどうしたいという思いもなく、日々充実しているわけでもなく。かと言って余裕は全くなく、あたふたとしているうちに仕事や人間関係においてミスや不信を繰り返していた。最初のきっかけは職場の上司に勧められて組合青年部の活動に参加したこと。具体的でなかったにしろ、自分の志というもだけは高々と内に秘めていた自分は結構真剣に社会と関わっている感じに前のめりになっていった。なんせ「至誠、天に通ず」と言ったところで、肝心要の至誠とはなんたるかを履き違えているような、危なっかしさに気付いていながら止まれない、そんな状態にあって感性に重きを置けるわけはない。ならば歴史的に我々はどこから来てどこに行こうとしているのかを明らかにして行くほうがいくらかでも前に進めている感じがあってよい。組合以外の社会活動にも参加しながら1年経たないうちに次の転機「エンデの遺言」に出会う。投資マネーの横行とそれに対抗する地域通貨のあり方を説く内容に膝を打つ。で、自分の生産性に思いを巡らしながら同時に自分の周りを見回して実家の近所で週末の家庭菜園をはじめる。さつまいもやプチトマトはそこそこ出来ても売れるようなものはできず、逆におすそわけをもらったりする始末。客観的に見ればそこで精進していくべきなのだろうが、もっと大きな満たされたい願望(逆から言えば飢餓感)があり、もっと大規模に、もっと合理的にと考えてしまう。躊躇している場合ではない。自分が決断することである。「職場近くの過疎地」という大雑把な見当をつけて自治体めぐりを開始することになった。

 2.就農半年前
 最初に飛び込んだのが今いる香北町の役場でした。職員の方が「具体的な政策があるわけではないので」と断りを入れながらも、ひと月半ほど経って「何かあれば」と交換した連絡先へ地元の農業委員会への出席を打診してくれました。これがチャンスの前髪、逃すわけにはいくまい。その委員会で思いのたけを語りました。なんといったのかは正確には覚えていませんが、環境面からや自分の仕事の傍ら(当時、福祉施設で農耕班の部署にいた)農業に取り組みたいわけを話したと思います。集中的に社会問題のあれこれを読み込んでいた時期でもあったので確信を持って話が出来たんだと思います。少し前のブレーキのない列車状態の自分からハンドル持ってアクセル踏んでる自分になっていました。この時、高知県の新規就農プロジェクト(高知県立農業大学校アグリ塾)もありまして、窪川町で研修中という方も卒業後の就農地を求めてこの委員会に来ていました。この方は条件が合わないということで別の地域に行ったということでした。収益が見込めるようある程度の規模でのハウス栽培を考えていたようです。こういう条件を満たす場所は中山間地域でも埋まっていることが多いのかもしれません。自分もこの新規就農プロジェクトは自治体めぐりの中で知っていましたが、仕事を辞めて2年間の研修というところにいささか決断を後回しにした感があります。この時の自分のメインテーマが就農へ向けての精進ではなくて社会問題へのアプローチと自己の自立にあったがゆえだと思います。

 3.就農一ヶ月前
 農業委員の方のアドバイスもあり米作りをメインとする兼業になりました。この頃、職場の農耕班へ出入りしていた地域の農家の方が熱心な有機無農薬栽培の推進者でもあったので、有機無農薬での米作りがメインになりました。具体的な「こんな暮らしがしたい」とかの当時言われ出したロハス的なものを目指したわけでは無かったのでいくらでも柔軟かつ情熱的に物事を進めていけたのだと思います。綿密な計画があったわけではないのに、うまいこといろんな人の最適なアドバイスが活かせて、結果として最も地域に適した兼業に耐えうる形態にたどり着いたのでした。住むところもすぐ近くに手直しのいらない空家がありまして、ここまで来ると強運と言わざるをえないものだったように思います。この引き寄せあいがなければ新規就農プロジェクトに則って、今となっては全く想像のつかない別のところへ流れ着いていたのだと思います。


 4.就農1年目
 まずは地主さんのトラクターをレンタルして耕うん。耕作放棄地だったところは草刈から始めてます。自分の場合は学生時代に一人暮らしをして以来の自炊生活。1月、2月のメニューは9割がキャベツだけのお好み焼き。貯蓄は20万足らず。手取りで13~4万な感じです。それでも2月には最初の農機具として管理機(20万)を2年ローンで買いました。先立ってクワやらなんやらはそこそこ買ってありました。軽トラも10万以内での条件でエアコンもついていないオンボロを1台。そんなスタートです。この2ヶ月で筋トレして鍛えていたとはいえ100数キロあった体重が10キロ減。その後も夏まで減り続けてトータル20キロ減りました。冬場の耕うんは草のタネを凍らして枯らすことと土に空気を入れることと言っておりました。これを2回だったか3回だったか水を入れるまでにやりました。4月になると水を入れて耕うん。これを代掻き(しろかき)といいます。無農薬でやる場合は田植えまでにこれまた2,3回代掻きをします。そうやって雑草を生えにくくします。
 1年目はGWに田植えをしました。肥料には油かすと魚粉を混ぜてEM菌で発酵させたぼかし肥料を使いました。これは例の有機無農薬栽培の農家さんから分けてもらったものです。田植えが終われば水の管理ができればいいのですが、夕に水を入れて朝に水を止めるのが理想なのに対して、あぜ(田んぼの周囲の土の部分)をきれいに塗れてなかったり、カニ等が穴を開けたりですぐ水が抜けてしまい、ほどなく水を入れっぱなしの管理になりました。そうこうしていると6月に入った頃にいもち病が発生しました。いもちはカビの一種で消毒が必要です。無農薬の建前ですから竹酢液を噴霧して立ち直りを待ちました。一度出た葉は半分枯れてしまいましたが、あとから出た葉が盛り返してくれました。とにかく何もわからないまま言われるがままに収穫までたどり着いたのが、全くもって自分の力でなかったような1年目でした。収穫したのがおよそ1反の田んぼで3俵(30キロ×6袋)でした。平均の半分です。それでもこのお米は今まで食べたことのない最高に美味しいお米でした。あまりの美味しさに収穫後には7,8キロ体重も戻りました。

 5.2年目
 自分のもうひとつの仕事は知的障がいを持つ方の入所施設の支援員なのですが、こともあろうにこの年の4月から農耕班より重度支援の部署に移動になりました。なれない現場に忙しい農作業の組み合わせで手抜き作業にならざるを得なかったです。それでも肥料を入れず石灰だけをいれていもち病が出ずに済みました。ただ、収穫時期にまともに休みが取れず、ずるずる収穫を伸ばしているうちに猪が来て結構な部分が荒らされてしまいました。収量は1年目と同じくらいでしたが、味がいまいちでした。

 6.3年目
 この年が一番いい出来の年でした。耕作地も少し増えて1反7背ほどに。自分も前年のてつは踏むまいと計画的に代掻き。苗作りはずっと別の大規模農家さんにお願いしているのですが、この年の苗は無農薬苗にして揃いも揃った綺麗な苗。いもち予防に竹酢液を噴霧。収穫もそこそこのタイミングでできました。自分は中山間地域で大型機械の入りづらい耕地です。また、お金もないし新規のコンバイン等は買うに及ばず、バインダー(刈り取り機)ハーベスター(脱穀機)を使います。バインダーで刈り取った稲わらを竹で組んだハザに掛けていきます。これが収量が増えると難作業になっていきます。竹も事前にたくさん準備しなければなりません。この時近くのガードレールに大変助けていただきました。あと、いろんなつながりで収穫を手伝ってもらいました。収量は7俵ほど。

 7.4年目以降
 ざっくり言いますと4年目以降は次第に増えてきた雑草やヒエに悩まされて苗の分けつもよろしくなく、収量は4俵程度に。6年目の去年は別の土地を借りるなどして収量を確保したのですが、以前からの場所ではほとんど取れていません。冬場にしっかりと雑草の種が凍らせて枯らせず、代掻きをしても後から後から草が出てくる。実はもっともっと農業そのものに精進しなければならないところなのです。しかしながら今年は無農薬ではなく、除草剤を準備しているところです。去年までの6年間を農業だけを取り出して振り返ってみると3年目までのドラマなんです。3年目には高知市で毎週土曜日に開かれているオーガニックマーケットに出品もしました。冬場に玉ねぎを主に作ってのことでした。有機無農薬がオーガニックマーケットの原則ですから、今年雑草対策に除草剤を使うとなると路線がちがってきます。そもそも4年目以降はオーガニックマーケットにも出品できていません。

 8.総括
 就農移住の話としてはすごく尻すぼみの話です。でも、就農と移住は継続されているんですけどね。こんな形になってきたのは、その時の目の前の現実が変わってきたからだと思います。十分とは言えないまでも本業のほうでアタフタしなくなり、思いとしては農業を捨てたくないのですが精進の方向が農業ではなくなってきています。就農をきっかけに移住した、けれども今は田舎暮らしが続いているだけ。静かな環境には1週間で慣れてしまいます。近所づきあいは難しくなかったですが、農作業のあれこれには結構厳しく指導される感じでした。2年目以降、しんどい時は逆に仕事に逃げている感がありました。それでも自分は農業をするために移住してきたんだという事実が個性を発揮します。何かを選択した。その積み重ねがひとまとまりになって自分を形作っていく。そんな一人一人が集まって社会を作っていく。憧れになるような就農移住ではないのですが、今の世の中を見て都会を取るのか田舎を取るのか。損得の計算ではなくて、心からの声に素直に反応してみるのが良いのだと思います。






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