2013年2月20日水曜日

アブラハム・H・マズロー『完全なる人間』

以前、『桐島~』の映画で、
「映画を撮ること自体を目的にしている」
ということに気付く場面が奇跡のようだ・・・
と言いました↓
http://riekonaito.blogspot.jp/2013/02/blog-post_17.html

なぜ、これが奇跡なのか?というのを
知るにはマズローの心理学を知らないと話が進みません。

マズローの本、思い切って買いましたよ。
(マジで資料代がかかるぜ・・・)



ちなみに、この人がマズローね↓
http://www.earth-words.net/human/abraham-maslow.html

速水さんの自分探しの本で
自己啓発の元祖はニューソートっていう話も出てきたけど
そのまた元祖の「自己実現」の概念をつくったのはマズローじゃなかろうか。

つまり、ホントの自分、完成された人間ってイメージを
つくったのはマズローなんだ。スシローではない。
 
スシローではなく、マズローは人間の「至高体験」を重要視している。
そして、『桐島~』の前田くんは「至高体験」をしている。
前田君の
「好きな映画と、自分が撮っているものが
繋がっていると思う瞬間があるから」
ってのは至高体験なんだ。
 
この本のP90~
高度の成熟、健康、自己充実に達した自己実現する人は、
ときとしてほとんどわれわれとはまるで
違った生まれの人間であることを示すほどである。
 
ここでマズローがあげている至高体験はこんな感じ。
 
*神秘的
*大洋的
*自然的経験
*美的認知
*創造的瞬間
*治療的あるいは知的洞察
*オーガズム経験(・・・となると宮台氏の恋愛しろも、ある意味アリか?)
*身体運動の成熟(これはスポーツ美学だ:http://riekonaito.blogspot.jp/2012/07/blog-post_09.html
 
映画版『桐島~』の前田が社会的評価ではなく
至高体験のために映画を撮影しているところに凄味があったわけだが・・・
 
この「至高体験」は手段ではなく目的そのものであるということに関しても
マズローは言及している。
 
P100~
至高体験は自己合法性、自己正当性の瞬間として感じられ、
それとともに固有の本質的価値を担うものである。
つまり、至高体験はそれ自体目的であり、手段の経験よりも
むしろ目的の経験と呼べるものである。
それは非常に価値の高い経験であり、啓発されるところが
大きいので、これを正当化しようとすることさえその品位と
価値を傷つけると感じられるのである。
 
で、この至高体験ですが・・・マズローによれば
「時空を超越するらしい」っす・・・。
 
いやー、もういきなりドラゴンボール。
精神と時の部屋に入ったことあるかどうかみたいな・・・
 
 
 
マズローの研究だと、至高体験で時空が歪むみたいです。
 
P101~
わたくしの研究してきた普通の志向経験では、すべて時間や空間について
非常に著しい混乱がみられる。これらの瞬間には、
人は主観的に時間や空間の外におかれているという
のが正しいであろう。
創作に熱中しているとき、詩人や画家は、かれの周囲を忘れ、
時間の経過するのも覚えていない。
かれが目覚めたとき、どれほどの時間が経ったのかを判断するのは
不可能である。かれは、まるでまどろみから
脱け出したところでもあるかのように、
どこにいるのかを見出すために頭を振らねばならないこともしばしいばである。
 
さらに描写が続くのだが、これ、学問の本を超えて
非常に美しい表現があるので、
その表現を楽しむだけでも読む価値があるかも。
 
P102~
恍惚時の時が驚くべき速さで過ぎ去るので、
一日はまるで一分間であるばかりか、またその一分間は非常に激しく
生きられるので、一日あるいは一年のように感じられるのである。
かれらはある点で、時間が停止していると同時に
非常な早さで経過してゆく別の世界に住んでいるかのようである。
われわれの通常の分別からすれば、もとよりこれはパラドックスであり、
矛盾である。それでもこれは報告された事柄であり、
したがってまた考慮雄しなければならない事実なのである。
このような時間の経験が、なぜ実験的研究にしたがい得ないのか、
わたくしにはわからない。
 
わからないし、実験しようもないけど「善」だ
・・・というのがマズローの
至高体験に関する結論かな。
 
これ、たぶん、ベルクソンの時間の哲学も知っておくといいよ。
 
そして、マズローは至高体験と自己実現を結びつけているのよ。
P123~
だれでもなんらかの至高経験においては、一時的に、
自己実現をする個人にみられる特徴を多く示すのである。
つまり、しばらくの間、かれは自己実現者になるのである。
 
<中略>
 
これらはかれの最も幸福で感動的な瞬間であるばかりでなく、
また最高の成熟、個性化、充実の瞬間―
一言でいえば、かれの最も健康な瞬間―でもある。
 
その他にも至高体験についてのマズローの考察は非常に美しい。
 
P135~
 
いまや、浪費するところがないのである。
能力のすべてが行為に投入される。
かれはいわばダムのない河のようになるのである。 <中略>

偉大な体育家、芸術家、指導者、政治家は、最善をつくした時、
このような行動特性を示すのである。

うーん、ダムのない河・・・のイメージは自分の中では
ベヨネッタのイメージかなWこんな感じ。
 
 ベヨネッタってクライマックスモードになると
「いや、これまでマメにHP削減してきたマメマメしい作業は
一体なんだったんだ?」というくらいに強大な何かを
召喚して敵倒しますよね・・・。
 
意識的な作業がたんなる助走で、至高体験がすべて。
これをゲームで表現しているベヨネッタは至高体験の疑似体験ができる
面白いゲームだと思いますよ。はやく2でないかな。
 
ちなみに、至高体験者が自信をつけるのかといえばそうではない。
『桐島~』の前田くんが非常に謙虚だったときのように
「わたくしは分不相応だ」というのが多い反応のようだ。
つまりあまりに圧倒されすぎて
「自分に至高体験キター」「けど、おれでいいのか」
モードになるらしい。
 
幸福・幸運・恩寵を感じ、そして感謝の念を感じるそうだ。
神に感謝したり、そうでない場合は運命や自然に感謝する。
宗教心理学ともつながるジャンルのようです。
 
身体的反応としては、至高体験後には
二種類の副作用(?)みたいなのがあって
「興奮・極度の緊張・不眠」
「くつろぎ・平和・弛緩・熟睡」
のいずれかだそうだ・・・。
後者のほうを強く望むよW

副作用はさておき、至高体験は永続的にその人をいかに変化させるか見てみよう。

P129~で、面白い部分をピックアップしてみる。

*世界観なり、その一面なり、あるいはその部分なりを変えることができる。
*人間を解放して、創造性、自発性、表現力、個性をたかめることができる。
*それをくり返そうとする。
*人生そのものを正当とみなすことができる。(たとえ不満にみちていても)

これ、たぶん十牛図と重ね合わせても 面白いと思う。
至高体験をして、また一般社会に下っても、
至高体験をする前と後では違うんだなー。(以下リンク参照) http://www.katch.ne.jp/~hkenji/new_page_46.htm

マズローにおいても 至高体験から下りてきた後の、
残効は良いものとされる。
マズローの場合は天国への訪問→地上に帰るって表現を使用している。


***おまけ***
至高体験は神秘的であるがゆえに、学問的に研究するには限界があるなぁ。
やはり、映像作品や芸術作品との相性が良いと思う。
だから結論としてはやはり『桐島~』の映画版観たらいいじゃん、ということになるかも。

あと、ネット界隈でジョジョの作者=不老不死説出ているけどW
荒木先生はたぶん「精神と時の部屋」に入って至高体験しながら
創作しているので時空が歪んでんだと思うW
マズロー読めばわかる!

(以下の画像参照http://routy.jp/qa/365から借りてきた。)
 

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