2013年2月11日月曜日

映画『ヤング≒アダルト』

ツイッターではやひでさんにお薦めしていただいて観た映画
『ヤング≒アダルト』



いやー、これ、観てよかった!

昨日の夜、孤独を紛らわせるために書を書いていたら・・・




なんだか、孤独の波のさらわれそう・・・(あたりまえだ)
になったので、この映画を観て
救われました。

この映画、アメリカのスクールカーストものに終止符を打つ映画じゃないかな。

これまでは洋画のスクールカーストものって、
スクールカーストの範疇で
ドタバタが描かれていたものが多かったけれど、

以前書いたスクールカーストのブログ記事↓

これは「その先にあるもの」をきっちり描いている。
ディズニーがシンデレラの
続編「シンデレラ2」を創作した時以来の衝撃でしたね!!
シンデレラのようにハイスクールで女王様になったら
その先どうなんの?的な。
つまり、オトナになったら
スクールカーストってどうなるの?ってこと。

このあたりは、日本の小説『ここは退屈迎えに来て』でも
触れられていて・・・「椎名くん」というスクールカースト上位の男子の
卒業後の様子が描かれていた。



あと、『ここは退屈迎えに来て』との共通点として挙げられるのが
「ファスト風土」を描いているってこと。
アメリカと日本、同じようなもんだな~とホント感心した。

そういえば、ショッピングモールについての文献を読むと、
もともとアメリカのほうが元祖なんだから、
その形態を真似した日本のファスト風土のようなものが
アメリカにあるのはあたりまえといえばあたりまえよね。


この映画は、日本でいうところの「ファスト風土」

注)ファスト風土について・・・詳しくはこの記事
http://riekonaito.blogspot.jp/2012/05/blog-post_04.html

・・・の街に、かつてスクールカーストの最上位だった
30代後半のヒロインがフラリと戻ってくるお話。

戻ってくるきっかけとなったのは「元カレに赤ちゃんができたこと」
しかもよくありがちなのが、元カレの嫁さんも地元の同級生パターン。

ヒロインがスクールカースト上位だった頃の感覚で田舎に戻ると
街の皆は「終わりなき日常」を延々と繰り返していて、
赤ちゃんが生まれたことに対し祝賀ムード。

そんな中、「スクールカースト上位だったから自分が
誘惑すれば相手は離婚するだろう」という傲慢さで
元彼を誘惑するヒロインの痛さよ・・・。

ヒロインはヤングアダルト小説(日本でいうところのコバルト文庫みたいなもの)
のゴーストライターで、この中途半端な立ち位置が最も重要。
(しかももうすぐ連載終わりそうな時期)

金髪白人30代後半の「ヤングアダルト小説のゴーストライター」っていう立ち位置は
他人からみたらこんなにバラバラだった。

ファスト風土の人たちの視点
1)結婚できなくてカワイソウ、同情という視点
(ただし、高校時代に彼女が女王だったことに
対する嫉妬もあってこその蔑みと思われる)
2)一方で、都会に出ている成功者を見る視点
3)冷静に他人の内面を見つめているフィギュアオタクの視点
4)ファスト風土の人間は「無」で何もない。
ヒロインは都会で自立してオシャレして、すべてが
羨ましい・・・自分も連れて行ってくれ、という視点

本屋の店員の場合
2年前のベストセラーのゴーストライターのサインなんて
本屋さんにとってはゴミ以下のものだから帰ってくれ

都会のボーイフレンドの場合
ドロドロしたしらがみ無しに付き合える自立したガールフレンド

都会の女友達
退屈なファスト風土から抜け出してきた仲間

他人から向けられる視点が違いすぎて・・・
自分がどの視点を内在化させたらいいのかヒロインは混乱している。
高校時代は鏡を見てうっとり&学校でも人気者だったことで
承認欲求が充たされていたヒロインも、
これだけ他人の評価がバラバラだと、どれを自分像だと
認識していいかわからなくなってしまう。

追い打ちをかけるよに、連載打ち切りが決まり
自信喪失していたところに、元カレの「赤ちゃんの写真」が
送られてきたので、自分の「この生き方でいい」という
支えがグラグラになったんだな。

しかし、後から考えると、なぜ、元彼は
元カノなんぞに「赤ちゃんの写真」をわざわざ送りつけたんだろ?

それを考えると、この映画を反対側から観ることができる。

どこかで、元カレのほうが
「生まれた田舎にずっと住んでいる自分、
高校時代の人間関係のまま自分」に
自信を持てずにいて、そこに「赤ちゃん」という目に見えやすい
勝利の証が出来たので
都会で働いている元カノに勝利宣言を
したかったのではないか・・・ということ。

元カレの奥さんも、そう。都会に出てライター業をしている
ハイスクールの元女王を「カワイソウ」と見下さなければ生きていけないし、
そもそも、それ以外の価値観があることなんざ気づかない。

嫉妬と蔑みで揺れ動く他人の内面を取り入れてしまう罠に
まんまとひっかかってしまったのがヒロインとも言える。

しかし・・・
田舎で親に庇護されながら高校時代の同級生と結婚し
家族をつくっている元カレもオトナなんだろうか?
元カレの嫁はいまだに高校時代の女子の仲間と「バンド」を組んでいて
地元で演奏・・・つまり部活の延長のようなことで自己実現欲求を充たしている。
彼女もオトナなのか?

ある意味、都会でひとりでがんばって自立しているヒロインのほうがオトナじゃないのか?
(露出狂のような服を着たり、オトナのサイダーという名称の飲み物を
注文するところあたりが痛くて観ていられないが)

そもそも、オトナって何だろう?

問題は、ヒロインが「痛い」ことではなく・・・
価値観が違うフィールドに戻ってきてしまったことである。

高校生の頃の価値観なんで、もうヒロインにとっては
とっくに過ぎ去った過去の栄光なのに
それにすがり付いていた。
その上、心に隙が出来た時に
ファスト風土側の人間の「結婚できなくてカワイソウ」
という心の声を内在化させてしまった。
それでボロボロになった。

でも、ファスト風土側にもそんな狭い視野で
彼女を見ている人ばかりじゃなくて
都会で一人でがんばっていることを評価し、憧れてくれる人もいる。
高校時代にスクールカースト下位だと思って
相手にしていなかった苛められっ子の男性が
彼女の内面の動きをよく見ていて、
(彼はスクールカースト最下位だったがゆえに人間観察眼を磨いていた)
高校時代のヒロインを「自分の鏡しか見ていない傲慢な女」とバッサリ斬り、
現在のほうのヒロインを評価してくれている。

価値観が多様化した現代社会で
他者、特に違うフィールドの他人の視点を内在化させると、
誰しもが混乱する。

この映画では都会の独身女性を
ファスト風土のパーティーに招いて泣かせたが・・・
もし、ファスト風土側の人間を、逆にヒロインの住む都会の
パーティーに招いたら、
ファスト風土側のメンバーが泣く側に回ると思う。

だから、ファスト風土側の価値観は価値観でアリだし、
ヒロインはヒロインの価値観の中で努力をすればいい。

これ、もはや、同じ国内でも異文化にあたるんだよな。
ファスト風土の部族では、赤ちゃんを産み、
命名パーティーをすることがハレの日の儀礼。
ヒロインが現在属している部族は、
文化というものを生み出す部族。(独身の場合も多々ある)

異文化のしきたりや、価値観など気にすることない。
かつては「高校」という同じフィールドにいたけど
高校もまた「異文化」なんだな。
異文化の中で女王蜂でも、いったんそこから抜けて違う価値観の
部族に入ると、とたんに「カワイソウな人」扱いになってしまう。
ファスト風土側は高校の「異文化」を引きずる痛い層とも読めてしまう。

どっちが上でどっちが下でもなく、違う価値観なんだな。

これ、あたりまえだけど、自信喪失時には
ついグラグラしてしまう軸なんだよなー
つい、他人の視点を内在化してしまい
「自分カワイソウだな」と思ってしまいがちだが、
もしかしたら、内在化すべきではない他人の視点を
内在化しているのかもしれないし、
そこには他人の想像力の欠如、無知、という背景もある。
だから、他人の視点を内在化することはやめるべきだ。

一方で、ファスト風土側の価値観も理解し
都会での成功も評価することができ、
ヒロイン内面の弱さを受け入れることのできる
フィギュアオタクの男性の知性は
辛酸を舐めたことから
生まれてくるものだろう。

ちなみに、この映画よりもかなり先駆けて、邦画『ゆれる』では
ファスト風土のルサンチマンを描いていた。
ただし、『ゆれる』では、主人公が男(しかもオダギリジョー)であることで、
独身の悲哀なんぞは微塵もなく、カメラマンとして評価もされていたことで・・・
勝者ゆえにファスト風土の人間を傷つけてなんとも思わない
傲慢さが溢れていた。(あとで後悔するんだけど)

となると、2006年の『ゆれる』は本当に早かったなぁ。
『ここは退屈迎えに来て』『ヤング≒アダルト』 のかなり前に
この対比を描いていた。

今回の映画の感想まとめ
*これ、たぶん独身女性の痛さを描いた作品と受け取る人多そうだけど違うと思う。
*それぞれの文化が異文化から見たら「痛く」見えるだけ。
*他人の視点を内在化して自信喪失する必要はない。
*スクールカーストは「単なる発達過程の一時的な階級」に過ぎない。
*ファスト風土は延々と高校時代の延長戦をやっている感じもある。
違う価値観の人から「お前は負けている」と思われていても、言われても
それを内在化する必要はない。
それよりも、自分のフィールドでもっと闘って良い仕事をしろ。

*それに気づいただけ、ヒロインの小さな旅は無駄ではなかった。

えーと、今回の映画『ヤングアダルト』に刺激を受けて、調べてみようと思ったテーマは
以下の2つですね。

*アメリカのショッピングモールの歴史について
(これは速水さんがもう書いているけど違う文献でも調べたい)

*通過儀礼なき現代社会において、オトナってなんだろう?

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