2013年8月14日水曜日

中村光『聖☆お兄さん』

先日、facebookで私の著作『現代日本の葬送文化』の
読者様に遭遇し、ダイオウイカを発見した時のような顔を
してしまいました。


図書館で読んでくれる人はいると思ったけど
値段設定と漬物石のような重さゆえに
まさか買って読んでくださった方がいたとは・・・。

『現代日本の葬送文化』http://riekonaito.blogspot.jp/2013/02/blog-post_21.html

AMAZON↓はこちら
現代日本の葬送文化


しかし、この本・・・
補説でけっこう冒険したがゆえにけっこう賛否両論あって

たとえば以下のブログ
http://blog.goo.ne.jp/fukufuku53/e/7c8653714669e3c541098476f3462025

サブカルと宗教を結びつけた本書に以下のような
疑問を呈してくださった。
現代の民俗を取り上げるため、ネット上の言説やサブカルチャーを分析対象としている後半は、現状では評価の分かれるところだと思います。取り上げた事例がどれほど一般化されたもので、一般に流布し永続性があるのか。事例の取捨選択は筆者の「カン」以外にはありません。とはいっても、従来の民俗学においても、研究者の嗅覚がまずあって、それに都合のよい事例を探してきたのではないかといわれれば、そうですとしか言えない部分もありますから、今後の同様の研究動向に注目していきたいと思います。

 
うーん・・・
カンという風に捉えられてしまったのは残念というか
宗教ーサブカルを結びつけた先行研究は
大塚英志、宮台真司、山中弘・・・といくつか存在するんですが・・・
サブカル研究の流れを踏まえずに
硬い本だと思っていきなりサブカルの話が出てくると
トンデモ説になってしまうんかも・・・。
 
とはいえ、「カン」と言われっぱなしも
納得がいかないので今年の前期に
文化人類学の講義で学生に
サブカルは宗教の役割を果たすと思うかどうか
質問してみたところ受講生のYくんから以下のような回答が。
(Yくんありがとうございます)
 
講義を受けて考えたことは、書ききれないが、そのうちのいくつかをここに書きたい。まず、オタク文化と宗教のこと。宗教は娯楽の無い時代に人々が持てる共通の話題や、コミュニティー作りの基礎であった。それが現代では、さまざまな娯楽があるため、薄れているのだと私は思う。宗教もアニメマンガも根は同じだ。はたから見れば、「知らない誰かが作った物語」だ。アニメの内容を心から信じている人はいないだろうが、会話中に劇中のセリフを言う人はたくさんいるだろう。そして、それが教訓のような言葉ならば、立派な「教え」だ。
 
大規模調査をしたけではないのでビッグデータは得られていないものの、
他にも1990年生まれの学生から複数の賛同の意見をいただきました。
 要するに、自分の「カン」のみで論を進めた・・・ということに
対する反論の素地は少しですが、できたように思えます。
 
『現代日本の葬送文化』の補説のプロトタイプは実は
ブログで公開してあります。
もし興味のある方はどうぞ。

あの世2.0http://riekonaito.blogspot.jp/2012/09/blog-post_2940.html
 
↑たぶんこのページだと見にくいと思うので、要旨を以下にまとめます。
 
かつて「他界観」は、老人が子供に行う「語り」によって伝承されてきた面が大きかった。
老人と子供の距離が断絶された現在、子供にとって老人の「語り」に相当するものは何だろうか。それは「漫画・アニメ」といったサブカルチャーであるだろう。

島薗進は「かつての高学歴の若者の自己形成が、書物による教養を通してなされたのに対して、70年代以降の若者の自己形成は、中間文化の中でなされる度合いが増えてきた」と指摘していた。この中間文化は「サブカルチャー」のことを指し、その内容の定義について、島薗氏は「手軽で読みやすい書物・テレビ・マンガ・テープ・ビデオ・CD・コンピューター」(島薗進『精神世界のゆくえ』東京堂出版)を挙げている。そして、「かつて文化の構造はエリート文化と大衆文化に分離した ひょうたん型 であったとすれば、現在は中間文化の広がりによってちょうちん型になろうとしている」といった指摘もしている。つまり、現代日本において、「文化」といえば、中間文化がマスメディアの拡大によって大きな範囲を占めているのである。そこで他界観という「文化」も中間文化、つまりサブカルチャー研究をすることがむしろ一般的であり、現代日本の他界観を解明する最短距離であるともいえるだろう。サブカルチャーという名称ではあるものの、サブカルチャーがもはや、日本においてメインのカルチャーになっていることに着目しなくてはいけない。

このサブカルチャーにおける他界観の「先駆け的存在」は江戸に誕生した「地獄八景亡者戯」だと考えられる。この落語が庶民の他界観に大きく影響を及ぼし、その影響が仏教そのものよりも大きいのではないか、と指摘したのは劇作家・北村想である。あの世での死者との再会、供養の概念の曖昧さ、閻魔大王の登場など現在の日本の大衆的な他界観はおおよそこの落語に集約され、作品となり、全国的に流布されたといってもいいだろう。日本には、規定された他界観が無いため、創作の「材料」として、あらゆる「あの世」のモチーフがパズルのように組み合わせて物語となり、それが消費される傾向にあるのではないか。この落語は横山やすしによって改変され、メディアに発表されたこともあり、脈々と受け継がれている作品でもある。落語は、かつての日本のサブカルチャーと解釈しても問題はないだろう。なお、落語は仏教の説話から生まれたという説もある。堅い法話ばかりでは肩がこるので、工夫した法話が落語になった、という説である。落語と仏教法話には「高座」「前座」などの共通用語が見られることも、この説を後押しする証拠とされている。つまり、仏教法話の「方便」が発展し、人々の心を惹きつけるジョークを合間に入れ、図らずも落語というスタイルで布教が成功したとも言える。
 


そして、伝統的な先祖祭祀観が解体しつつある現在、日本人の他界観、特に「若者の他界観」を如実に反映しているサブカルチャーは、「落語」や「図鑑」「映画」よりも「マンガ」「アニメ」である。他のメディアと比較し、「絶対部数」が圧倒的に多い。若者の「宗教嫌い・神秘好き」の傾向と相乗効果になり、マンガ文化は現在の他界観のうつし鏡的な存在となった。日本における他界観は宗教や民間伝承の領域から離れつつあるものの、死後の世界に対する興味は尽きることなく、そのニーズに応える形で消費文化として物語消費されているのが「死後の物語を描いたマンガ」なのだ。(詳細は内藤理恵子『現代日本の葬送文化』岩田書院でご確認ください)




他界観だけに限らず、日本における宗教の習合イメージとして『聖・おにいさん』というマンガ作品を挙げることができる。












このマンガにおいて「父と私と精霊」(本来は父と子と聖霊だが)という記述がある。
これはアニミズム的な精霊とキリスト教三位一体における聖霊との混同である。現代日本の若者における キリスト教理解の誤解が、偶然ながら表現されている例であると言っても過言ではない。
釈迦とキリストが現世で共同生活するストーリーは、現代日本の宗教の習合を表現しており、仏教・キリスト教のモチーフが交互に登場する。日本における他界観は一定のイメージを持たないが、マンガ作品はそれら混沌としたイメージを包括した民間伝承として機能している。

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でも、「マンガ」というメディアも
だんだん動画サイトなどに
押されている模様。

ネット社会になってから、さまざまなことが
ものすごい勢いで変化する。

サブカルの嵐の目は
マンガ→アニメ→動画サイトと
めくるめくまに移り変わったのでは。

ということは、次は動画サイトと宗教・・・について
論じればいいのでは?

とうわけで、次回はニコ動で仏教×サブカル動画を拡散している
「蝉丸P」という若い僧侶の本を紹介します。
 



 

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