2014年4月20日日曜日

山内マリコ『アズミハルコは行方不明』

くまこさんに教えていただいた
山内マリコ先生の新刊を読みました。



くまこさんは前作よりも新作のほうがお好きとのことでしたが・・・
私は前作のほうが丁寧に編み上げられていて好みでした。

前作の感想:http://riekonaito.blogspot.jp/2012/09/blog-post_7.html

でも、うれしかったのは、愛知県郊外が舞台だったことですね~

いままで、disられることもなければ
称賛されることもない
本当にスルーされるだけの場所を
物語の舞台にしていただけて
待っていてよかった、という気持ちはありました!

名古屋市外の愛知県という
渋谷の人が一生のうちに2秒も思いを巡らせることが
ないであろう土地を物語の舞台にあげていただき
山内マリコ先生ほんとうにありがとうという気持ちで
いっぱいになりました。

名古屋の大学に進学して名古屋でうつパチンコと
地元でうつパチンコの違いなど
めちゃくちゃ細かい描写とかビビりました!

これまでは東京に行く・行かないの次元で語られることが
多かった「地方の話」ですが、
いまはもっと奥地に分け入って
名古屋に行く・行かないがリアルなんだなぁ。

この次元まで持ってきたことは、
むしろ一周まわって若者文化の最先端!
という気もします。

最新の若者事情:http://riekonaito.blogspot.jp/2014/03/blog-post_21.html

しかし、このような共感要素MAXであるにも関わらず
やっぱり前作のほうが好きというのは
なぜだろう?というのが自分でも
最初はよくわかりませんでした。

まず、前作は、第一に「地方に住む若者」という
斬新な切り口が
新鮮すぎて、それだけで満足できた。

今回も同じ主題だったので、これは
かなり驚きました。

2作続けて同じ主題って
むちゃくちゃハードル高いような気がします。
いっそ村上春樹のような型ができるまで
続けていただきたいような気もしますが
2作目ってことで前回のような「!!」は起こらなかったのかも・・・

あとは、前回は地方に住む者の中にある
かすかな希望を感じたんだけど・・・
(前作は上京したサブカルの軽い絶望も入れ込んでいて
バランスがとれてた)
今回は地方に住む者の
希望の先の絶望を描いてた気がする。

恋愛の質も、就職先のジェンダー意識も、
なによりも地方でアートをすることについての
「行き止まり感」の絶望感を感じる。
たとえネットで話題になっても、地方の若者は
絶対にここからは超えられない、
という壁をはっきり描いている。

そして、最後のシーンは地方都市に住む若者の
カタルシスじゃなくて
『ぼくらの7日間戦争』のようなものに見えた。
もしくは絶望の底が抜けた躁状態のように感じました。
活き活きとした生命力と解釈できないのは
たぶんリアルに愛知県郊外に住んでいて
ファンタジーとして見れないせいかもしれないけど・・・。

しかし、前作と今作同じ「地方の若者」という
切り口だからわかりにくいけど
微細に読んでいくと、
もしかしたら狙っている読者層が
前回と違っているかもしれないと思った。

前回の読者層が「地方に住むサブカルの共感軸(ロスジェネ)」だったのに対し
今回の読者層は「東京に住んでいて
地方の閉塞感あふるる若者の生態に
興味のある人・しかもリアルタイムを反映したもの(年齢層問わず)」
なのかもしれない。

同じ主題だけど、違う読者層を狙っている
可能性もありますし
前作と今作を比較してはいけない気もするのです。

気になったのは女子高生のギャング団のイメージが
LINEを使っているという現代的な要素がありつつも
全体的には、どことなく90年代のコギャルなところです。
石田衣良の小説に出てきそうなイメージ。

(ちなみに、参考文献にはこの本が挙げられていた
http://riekonaito.blogspot.jp/2012/03/13-7-1117.html

話はいったん飛びますが・・・
石田衣良がリアルタイムを反映した小説でデビュー
したのが1997年ですよね。
その頃って、まだリアルタイム小説が
成立可能だったギリギリの時代だったんだと思う。



池袋ウェストゲートパークの小説のシリーズ読んでいた人は
たぶん覚えているとおもうけど
主人公って、途中で雑誌のライターになりますよね??

雑誌の売り上げのピーク時が1996年だから
そこらへんのリアルタイム小説の主人公が
雑誌のライターになり、さらに物語の舞台が
東京ってのもわかる。

いま、石田衣良的なチャレンジ(リアルタイム若者小説)を
書くことにチャレンジするとなると
凄まじく大変だと思う。

池袋ウェストゲートパークの時期は
雑誌文化の時代だから執筆に半年や一年かかっても
リアルタイム小説になる。

でも、いまはスマホの時代。
与沢翼が秒速で億を稼いで、
若者文化も秒速で変わっていくのだ・・・・・

その秒速で変わっていく風景(ネットの流行・地方の空気・若者の心象風景)
をスケッチして単行本かきおろしで出すなんて
凄いチャレンジをしているのが
山内マリコ先生なんだと思う。

だから、前作のような
地方に住む若者の胆汁を集めて
コトコト煮込んで結晶にしたようなクオリティを求めるのは
ちょっと筋違いかもしれない。

地方の若者の「イマココ」をスケッチしようとした
挑戦作として読めば、また違った良さが見えてくる
『アズミハルコは行方不明』
前作とセットで読むのをおすすめいたします。

内藤理恵子の読書道:記事ラベル

宗教 鷹の爪 ガールズカルチャー 哲学 若者文化 仏教 映画 ゲーム考 文化人類学 月刊住職コラム連載 社会学 キャラクター文化 ヤンキー 中外日報シネマ特別席掲載のご報告 あじくりげ映画コラム連載の掲載報告 アニメ ジェンダー 2014現代文化 仕事について 2014年「世界の宗教」講義録 90年代サブカルコミックエッセイ ヲタク文化 消費文化論 2012前期哲学(火曜)講義録 2012前期現代文化(木曜)講義録 対談シリーズ テン年代自分崩しの旅 脱力系ネタ 音楽 新聞・雑誌掲載関連 漫画考 2012前期哲学(月曜)講義録 小説 2012後期倫理学(金曜)講義録 2012後期哲学(火曜)講義録 心理学 自分探し 迷走コミックエッセイ 雑学 2000年代自分探しコミックエッセイ 2012後期社会と企業講義 研究論文関連 2012前期社会と企業(水曜)講義録 2012後期スポーツと企業講義 2013前期文化人類学(火曜)講義録 とびださない!どうぶつの村 2013前期 社会と企業 講義録 2013前期現代文化講義録 ポストモダン 日記 美術 2013哲学講義前期 現代思想 1990年代生まれの謎 企業 実用 ツインピークス祭 倫理学 KAWAII文化 アイドル考察 スクールカーストについて ドビ子の微妙な冒険 リンチ監督 旅日記 映画バカヴォンの予習のためにウパニシャッドを読む 私の体験談 そもそも教育って何なんだ?論 インテリア スポーツ美学 ドビ子博士GOを目指す 古墳ギャルコフィー 理恵子のお片付けダイアリー 純喫茶の「純」とは何か 『必修科目鷹の爪』読者限定☆リンク集シリーズ イカ部 オカッパ部 ジャバラネットナイトウ(おすすめのモノのご紹介) 名古屋 経営 経済 いじめ問題 ふつうの日記 まど☆マギ 似顔絵師ドビ子の放浪記 月刊住職連載 さんぽ日記 内藤理恵子イラスト作品集 読書について 『少女革命ウテナ』考察 まとめシリーズ 寄稿文 手芸キット レポートの書き方 ドビ子連続ネット小説「塩辛いちゃん」 何か間違っているオシャレ道 別冊spoon.34 散骨 松田優作ファミリー TV出演ネタ 2013年後期 哲学(火曜)講義録 写真 初音ミク×般若心経 構造主義 買い物道 わび・さび ドビ子が書評を演じます ドビ子アナザーワールド ラジオ出演ネタ

この窓の右端の▼をポチッとするとタイムトラベル