2014年6月21日土曜日

『プルーフ・オブ・ヘブン』✖️『霊界日記』

私はかねてからスウェーデンボルグの『霊界日記』が好きで
ブログに紹介したいと思ってはいたものの
あまりにも独創的で
異端な存在なので
どう紹介していいのやら
わかりませんでした。
(私は角川文庫版を持っていますが、
アマゾンへのリンクがうまくできないので
たま出版版を貼っておきます)


文学的にも素晴らしいし、
冒険物語として読んでも一流のエンタメになっているし、
神学的にも独自の境地を切り拓いたという
ことになっていると思うんですが
いかんせんブッ飛びすぎていて…。

日本だと丹波哲郎氏の『大霊界』が有名なので
そのイメージと重なるかと思います。



しかし丹波哲郎氏は丹波哲郎氏で独自の世界観が出来ているので
そこを触り始めるとキリがありませんので
いったん保留にさせていただき…スウェーデンボルグの話に戻ります。

スウェーデンボルグの『霊界日記』は鉱山技師だった彼が
55歳から突然「あっち側の世界」と素で往来できるようになり
そこで見聞してきた経験を元に書かれた書物です。

スウェーデンボルグの面白いところは
彼の「あっち側」との関わり方だと思います。

幽体離脱や、臨死体験者のほとんどが
病気・怪我などで意識不明になり、その時に
観たヴィジョンを「あの世」と
認識したりしているんですが
スウェーデンボルグの場合は

「素で」「正気で(たぶん)」「なんの原因も無く」

あの世とこの世を往来するようになり
『霊界日記』を書いたところでしょう。
彼の言葉ではこのように書かれています↓

私の心は形体的なものからまったく離脱し、霊的な存在者や
天的な存在者の社会にいることができ、しかもそれでも地上のほかの
人の場合と何ら異なることなく、つきあっているのだ。
この事実に霊たちも驚いている。

…この事実に霊たちも驚いているW

とのことで彼の「あの世体験」は
異例中の異例みたいですね。

1)睡眠中に見たもの
2)目を閉じているときに見たもの
3)目を開けているときに見たもの(不鮮明)
4)幽体離脱しているときに見たもの

を記述しているとのことです。

でも、まぁ、常識的に考えたら、
ちょっとアレよね、という感じかもしれません。
そういう方も、スウェーデンボルグを
「文学」だと思って読んでみると
凄く面白いです。

たとえば、スウェーデンボルグが聖母マリアとあの世で
会ってイエスキリストについてどう思うか聞いたり、
ニュートンと話したり(ということになっていたり)、
なんと、スウェーデンボルグはキリスト教の枠組みを超えて
中国の禅僧の霊と交流したり
モーセとも会話している!(ことになっている)

あの世でモーセが自分自身や旧約聖書についてどう思っているか
インタビューしたスウェーデンボルグ。ユニークすぎる…

信じるか、信じないかというよりは
このようなことを経験し、書籍化され
角川文庫にもなっているということ自体が
興味を惹きます。
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しかし、スウェーデンボルグの場合、
「彼の脳内に起こった何らかの事態」が見せているという
可能性が否定できないわけで…

「文学」「斬新すぎる神学」としては面白いけど
科学的には価値とか無いでしょ、というのが
通説だったような。

臨死体験系宗教文学作品といえば…
日本では、源信の『往生要集』が元祖かな。



現代日本では、
立花隆氏が「あの世」に関して
なんとか論理的に説明しようとして
本を書いていた時期もありました。




しかし、やはりそれでも
「人間の脳は危機的状況に瀕すると
共通のヴィジョンを見るのでは?それが(仮)で
あの世のイメージになっているのかも」

という考えがどうしても抜けませんでした。

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ところが、最近、ついにその壁を超えて
臨死体験を主観的な冒険の記録&科学的見地両者から
考察した奇跡的な書籍が出ました。



本人が脳神経外科医で、
しかも脳の機能に大ダメージを受けるレアな病にかかり
さらにその条件下で「あの世」のビジョンを見てから
その経験を記述し、分析したという書籍です。

彼の見たビジョンの描写は、芸術性に溢れているので
信じる・信じないは別として読む価値があると思います。

私の読んだ印象だと、彼の見たビジョンの世界観は
曼荼羅のような印象でした。
(読み手によって解釈は違うと思うけど)

「あの世」の描写の分析は、読み手の宗教観に左右されるので
なんともいえないけど、この本の重要な部分は

「臨死体験は脳が危機的状況に陥ったときに
 見ることになっている妄想的なものではないか?」という
のどにひっかかった小骨を
ひとつひとつ丁寧に潰しているところ。

これは脳神経外科のプロで、
なおかつ臨死経験者で、なおかつ驚異的に
回復しないとこの仕事はできなかったであろう
貴重なものでした!

彼の論証をざっくりまとめるとこんな感じ

============================
1:末期の苦痛を和らげるための脳の原始的プログラム説
→にしては双方向性のある複雑な内容だったので違う

2:髄膜の炎症で起こった回想的なもの説
→この説もヴィジョンの双方向性から否定

3:内因性グルタミン酸の興奮毒性の阻害(←なんのことだか
わからないけどこれは違うとのことです…
この場合、もっと不愉快な幻覚のはずだ、
ということで否定されていますが、
それは個体差があるんじゃ…というツッコミはしちゃいかんのかな)

4:DMTっていう脳内物質の作用説→脳の炎症でこれが作用する部分が
働いてなかったことから否定

5:臨死体験者の大脳皮質の機能が炎症にも関わらず
維持されていた部位があったんじゃないか?説→データを出して否定

6:抑制性ニューロンのネットワーク障害ゆえに興奮性ニューロンの
動性が高まった説→脳のプロだけあって論理的に否定

7:超現実感は脳幹に関係しているのではないか?説→対話型の豊かな
ビジョンは脳幹だけでは無理

8:再起動現象説→意識回復のときに、古い記憶が放出されたという説は
記憶の精巧さからしてありえない

9:鳥類がよくつかっている中脳の原始的な回路が使われた説
→これだと視覚聴覚体験が説明できない

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私は医学について何も知らないので、なんとも言えないんだけど
どのような論理で彼が、自身の体験を「宗教的なもの」であるか
立証しようとしているかという軌跡はぼんやり見えました。

信じる・信じないは別として
それまで臨死体験に否定的な見方をしていた
脳の専門家が実際にそれを経験したことで考え方が代わり、
「それを論理的に考えてみた」ということだけでも
価値のある本だと思いました。

このキーワードは
「臨死体験の双方向性」かな。
要するに「もしこれが脳が見せる幻覚だとしたら、
双方向性がありすぎ→だから宗教的体験だ」
っていうのがポイントになっていると思う。

もし万が一、仮に、
彼が見逃している「脳の作用の何か」が
彼の神秘的な体験の原因だったとしても、
彼が見たヴィジョンや、そのヴィジョンから
受け取ったメッセージはとても美しく愛に溢れていて、
一読の価値があります。

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